Vol.1 子どもたちとの関わり方①

子どもたちの可能性

サッカーの世界に足を踏み入れたばかりの、ジュニア年代の子供たちを指導しているコーチの責任は非常に大きなものです。
子供たちの可能性は計り知れません。一時期パッとしなかった選手の才能が急に開花したり、逆にすごかった選手がその後、順調に成長できなかったりというケースはよくあります。コーチに求められるのは、その子供たちの「芽」をつぶさないようしながら、サッカーに夢中になる環境を作ることではないでしょうか。
何事でもそうですが、第一に楽しむこと、好きであることが必要です。そこからすべてがスタートすると言えるでしょう。そして、その心を持つのが早いに越したことはありません。つまり、なるべく低い年齢のうちにそういった心を持つ環境を作る必要があるのです。
このような「心」を持てれば、中学生、高校生になったときに、辛い、厳しい時期があっても乗り越えることができるでしょう。

現在、ジュニア年代のほとんどのコーチはポランティアとしてチームにかかわっていると思います。ヨーロッパでも同様に、それを職業としている人は少ないものです。
例えば、オランダ、イングランドの名門であるアヤックスやチェルシーなどでも、ジュニア年代のコーチのほとんどがアルバイトコーチ、またはポランティアコーチ。チームとプロ契約しているコーチの数は1けた台が普通です。U-19など、上のカテゴリーのコーチのみがプロ契約をしており、それ以外のコーチはほかに仕事を持っているのが実状です。
これはジュニア年代が軽視されているということではありません。これらのコーチたちも選手に対して、常に真剣に向き合って選手の土台を作り上げています。そして、これこそがコーチたちのステータスとなっており、このようなコーチたちの熱意が結集されて、サッカー強豪国が成り立っていると言っていいでしょう。
日本のサッカーが本当の意味で世界の強豪国の仲間入りを果たすか否かは、いかに「底辺」を整備、充実させ、安定できるかにあります。これを支えているのがジュニア年代のコーチたちなのです。つまり、そのカギはポランティアコーチが握っていると言っても過言ではありません。

理想的な関係構築

具体的なトレーニングを紹介する前に非常に大切なこととして挙げたいのが、コーチと子供たちの間にしっかりとした信頼関係を築くこと。これはトレーニングのプログラムを作る以上に大切な部分です。中には、「コーチと子供の間に距離を置くことも必要」と考えている指導者もいるかもしれません。
しかし、サッカーの世界に足を踏み入れた子供たちとはある程度の近い関係を築き、サッカーに親しみ、触れ合うアットホームな雰囲気を作ることも必要です。年齢に関係なく、子供たちの良い「兄貴(姉貴)的な存在」になることが理想だと思います。
では、どういった「兄貴」が、またどういった関係が理想的なのでしょうか。それは子供たちを集合させたときにはっきりと分かります。コーチが話しているときに子供たちがあちこち向いているようでは良い関係を築けているとは言えません。まず、子供たちがコーチの言うことにしつかりと耳を傾けることが必要です。
そして、子供たちがコーチの動きをしっかりと見てそれをまねする。しかも、「これを押し付ける」のではなく、自然にこのような雰囲気を作ることを心がけます。非常に単純なことですが、これこそが理想的な関係だと思います。そのためには、褒めるときには褒め、怒るときは怒ることが必要です。「人間同士の付き合い」が大切になります。
「FUN(楽しさ)」はジュニア年代のサッカーにおいて不可欠な要素です。トレーニングでは、レクリエーション的なFUNの要素が多く含まれたものを行なう必要があります。では、子供たちにとってのFUNとは何でしょうか。人それぞれで異なるかもしれませんが、私は以下のようなFUN があると考えています。

FUNの要素
①達成感
何事においても、「自分が上達した」「目標を達成できた」ことが自信につながり、さらに物事に興味を持てるきっかけとなります
②コミュニケーション
仲間と協力して物事に取り組むことの楽しさです。また、仲間やコーチなど、人に認められる喜びもあります
③興味
サッカーそのものへの楽しみ。これは、プロ選手のプレーに魅了されて興味を持ち始めることなどが当てはまります
④好奇心
いままで触れたことのないものに対する楽しさです
⑤競争心
人との競争に挑む楽しさです。また、競争に勝ったときの喜びは、子供たちにとってかけがえのないものとなります

このような要素がジュニア年代の指導にとって欠かせないものです。

文:平野淳 構成:井上直孝

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