Vol.3 子どもたちとの関わり方③

コーチの大切な仕事とは?

グラスルーツのクラブでは、子供たちの技術レベルはさまざまです。「技術が飛ひ抜けた子供」と「初めてボールを蹴ったような子供」が一緒にボールを追いかけていることなどは日常茶飯事でしょう。
特に、小学校低学年や幼稚園生に関してはその傾向が顕著に現れます。それは、運動経験や発育・発達の差など、さまざまな要因からくるもの。したがって、子供たちはいつ「化ける」のか分からないとも言えます。だからこそ、コーチは選手の将来を考えることが必要です。
チームによっては低学年の選手にもレベル分けをしてトレーニングしているところもあるかと思います。これでは子供たちの夢や可能性の芽をつぶしてしまいかねません。いろいろな子供たちが同じトレーニングを行なうことで、お互いに多くの刺激を得られると私は考えています。
では、レベル分けをしない中で、どのように指導してくのが良いのでしょうか。まず、子供たち一人ひとりに目を配り、個人をベースにして課題やテーマを変化させることが必要です。そして、子供たち自身が目標を持ってサッカーに取り組む、という意識付が求められます。子供たちが、「楽しい」、「うまくなりたい」と思うようになれば、自然とやる気が出るものです。そして、やる気が出たときこそ子供たちが成長する一番のタイミングです。コーチの大切な仕事は、子供たちにこような環境を与えることだと思い出す。
子供たちには生まれ持った才能というものがあります。そして、その才能を開花させるには、子供たち自身の意識が大きく影響します。まずは子供たちに興味を持たせ、意識を高めるように動機付けすることが大切になります。そして動機付けするためには強制的にトレーニングをさせるのではなく、子供たちが魅力を感じるプログラムを提供することも当然、必要です。

トレーニングの組み立て方

では、コーチがトレーニング・プログラムを組み立てる際には、どういったことに気をつければいいのでしょう。私はまず、「その日のトレーニングで何を伝えたいのか」を自問してもらいたいと思います。すなわちトレーニングのテーマです。これは各チームのレベルなどによって異なりますが、子供たちをしっかりと観察して決めるようにします。
テーマの数は、多ければ多いほど良いというものではありません。できるだけシンプルに、1つか2つのテーマに紋ることが必要です。コーチの伝えることが多くなればなるほど、選手にとってはその焦点がばやけてしまうことが多いものです。まずは、1つ(あるいは2つ)のテーマに絞り、しっかりとその伝える内容を整理することが必要となります。
テーマが決まれば、あとはプログラム作りです。流れとしては、「テーマの決定」→「SSG(スモールサイドゲーム=ミニニゲーム)」→ボールワーク(=テクニカル・トレーニング)」→「ウオーミングアップ」という、トレーニングとは逆の流れで、それぞれの大まかな内容を決めていくとプログラムが作りやすくなります。
実際のメニューに関しては、書籍などで多くの情報を得ることができると思います。コーチはつねにアンテナを張り巡らし、それらの情報を少しでも多く習得し、「自分の物」へとアレンジすることが大切です。
多くの指導者は、「たくさんのトレーニング・メニューを知りたい」と思っているかもしれません。しかし、どんなに多くトレーニング・プログラムを知っていても、自分の指導におけるフィロソフィー(哲学)を持っていなくては、何の効果も生まれないということをまずは理解していただきたいと思います。指導者が自分のフィロソフィーを持つことによって、初めてそれぞれのプログラムが生きてくるのだと思います。「コピー」したトレーニングだけでは、子供たちも満足しないはずです。
ぜひ、皆さんのフィロソフィーの下、これからこのコラムで紹介するトレーニングプログラムを「料理」してもらえればと思います。
トレーニング後、子供たちが「今日は楽しかったー」、「またすぐに練習をやりたいー」と思ってくれたら、その日の練習は90バーセント成功したと言えます。つまり、「腹八分」の状態です。がむしゃらに長時間練習するのではなく、短時間で終えることで、子供たちのモチペーションを次回のトレーニングや試合へつなげることができるでしょう。
残りの10バーセントは、「子供たちがその日の練習から何をを学んだか?」、「どんな剌激を受けたか?」などによって変わると思います。この部分に関しては、コーチングの質によっても変わってくるものだと言えるでしょう。
しかし、どんなに良い指導をしても、100バーセント成功するケースはない思うのです。何らかのミスや修正点はあるものだと思います。
「子供たちの待ち時間が長かった」、「テーマを浸透させられなかった」など、修正すべき点をコーチが理解することも必要です。その日のトレーニングを振り返り、反省することによって、コーチも成長し、次のトレーニングに活かすことも忘れないでください。

ジュニアコーチの心構え

最後に、ジュニア年代のコーチの方々にぜひ意識してもらいたい10項目を以下に紹介します。これは、私が尊敬するヤン・M・ハンセン氏(元デンマーク協会 グラスルーツ部門責任者)がまとめたものです。コーチ歴が長くなればなるほど、重要なことを忘れてしまいがち。私もいつもこの言葉を読み返し、初心を忘れないようにしています。
①子供たちはコーチの物ではない
②子供たちはサッカーに夢中だ
③子供たちはコーチと共にサッカー人生を歩んでいる
④子供たちから求めることはあっても、コーチから求めてはいけない
⑤コーチの欲望を、子供たちを介して満たそうとしてはならない
⑥アドバイスはしても、コーチの考えを押し付けてはいけない
⑦子供たちの体は守ること。しかし、子供たちの魂まで踏み込んではいけない
⑧コーチは子供心になること。しかし、子供たちに大人のサッカーをさせてはいけない
⑨コーチが子供たちのサッカー人生をサポートすることは大切だ。しかし、自分で考えさせることが必要だ
⑩コーチは子供たちを教え、導くことはできる。しかし、勝つことが大切か否かを決めるのは子供たち自身だ

文:平野淳 構成:井上直孝

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