Vol.8 デンマークにおける普及活動

ストリートの再現

 プロジェクトは、Vol.7の最後で紹介した4つの目的の柱として、楽しく、しかも系統立てられたプログラムを提供。DBU(デンマーク・サッカー協会)が当然ながら中心機関となり、6つの地域サッカー協会、そして地域クラブとも協力体制を築いている。
 DBUがプログラムを熟知したリーダーを各地域に派遣し、そのリーダーたちが地域ごとに普及活動を行なう。これは、JFAが実施している『キッズリーダー』と同じシステム。協会で教育を受けたあと、キッズリーダーは積極的に学んだことの伝達を図っていく。
 デンマークの場合、サッカースクールに登録しているコーチの数は1000以上。登録コーチがサッカースクールのコーチとして活動している。
 スクールの開催にあたっては、インターネットなどで告知。DBUの会報などでも告知し、近くで行なうスクールを子供たちが探し出し、 参加できるようになっている。なおスクールには、 協会に登録していない子供でも参加できる。
 ちなみに、『DFUサッカースクール』の5日間コースにおける参加費は約60ドル。参加者は、トレーニングに参加できるだけでなく、Tシャツ、補食、飲料用ボトル、サッカーボール、記念写真と修了証がもらえる。これらのプロジェクトは1993年に正式にスタートして以来、多くの子供たちが参加している。
 サッカースクールの流れを紹介しよう。スクールキャンプ開催に向けてコーチ間でプログラムを何度も確認することから始まる。1000人のコーチが同じべクトルの下に指導を進めていくのは大変なことだが、スクールのクオリティーを保つ上でもコーチ陣への教育には細心の注意が払われている。各コーチがしっかりとプログラムや当日の流れを把握した上で行なわれるので、スクールでは子供たちが常にプレーできる内容が用意されている。
 そして、『エアピッチ』(ピッチの四方を簡易的に囲むために空気を入れて膨らませるもの)や『ブーメランボール』(腰にゴムを付けてボールにくくりつけ、どこへキックしても戻ってくるような道具)などの新しい用具を使用し、子供たちが興味を持つように心がけている。
 また各日程の最終プログラムには、「3対3」や「4対4」のミニケームが必ず取り入れられている。ミニゲームか行なわれている背景には、以前は道端で子供たちがサッカーをする機会が多くあったのだが、今日ではそれが少なくなってしまったことから、ストリートサッカーを復活させようという考えもあるようだ。
 サッカースクールにはさまざまなコースがあるが、基本となるのは5日間のコース。8〜10歳、11〜12歳、13歳以上とクラスが分けられ、月曜日から金曜日のそれぞれ9 時〜15時まで行なわれている。
 この期間の中でサッカーのトレーニングとイベントを交互に行なうようにしている。基本的には、技術練習が1日2コマ(1コマ約60分)、ミニゲームが1〜2時間実施される。時間としてはかなりの長くなるが、休憩をうまく挟んだり、他のスポーツ(フリスビーやグラウンドホッケーなど)なども織りまぜ、子供たちが飽きないようにうまく工夫されている。

未来への種まき

 トレーニングには、各年代や技術項目ごとに分けられたトレーニング・メニューが記載されたマニュアルがある。それをベースにして、コーチが子供たちに合ったプログラムを提供する。
 プログラム全体では技術練習に多くの時間を費やしている。その構成には、5日間という短期間で少しでも多くの技術を習得してもらいたいというDBUの考えが反映されている。さらには、子供たちが技術を向上させ、達成感を味わえるきっかけを作ろうと試みているのだ。
 同様に、『DANMARKS Fodbold festival』(デンマーク・フットボールフェスティバル)も毎年、デンマーク各地で開催されている。これはU-6年代をはじめ、U-13年代以上の子供たちも楽しめるようなさまざまなプログラムが提供されるイベントだ。毎回多くの子供たちが参加して盛り上がりを見せている。
 このような低年齢の子供たちへ対し、大会形式のみならず、スクールやイベントを通じてアプローチを図っているのがデンマークの特徴だ。ジュニア年代から特徴的なプログラムを経験することによってサッカーを愛し、楽しむ心が芽生えるのだろう。これらのイベントを経験した多くの人は、自分がサッカーをプレーすることから離れたあともクラブチームや代表チームのサポーターとしてサッカーを支えていくのだ。

文:平野淳 構成:井上直孝

関連記事一覧

月を選択