vol.2 子どもたちの可能性を広げよう

 「子どもたちの指導をする上で大切なのは、子どもたちの可能性を広げること」という考えに対しては、誰もが賛同してくださると思います。では、「子どもたちの可能性を広げること」とは一体どのようなことでしょうか。
 指導に携わっているコーチ(大人)の子どもたちへの接し方は人それぞれ違うので、それらについての良し悪しは一概に言うことはできません。感情をあらわにするコーチもいれば、表にあまり出さないコーチもいます。コーチの個性(キャラクター)によって違ってくるので、「どれがいい」とは言い切れないでしょう。しかしどういった接し方であっても次の点が大前提になります。それは「コーチが子どもたちの個性を尊重し、信頼関係を構築する」ことです。つまり、子どもたちがコーチを人生の先輩として敬意を払い、そのなかで、コーチが子どもたちの持っている無限の可能性を秘めた「発想力」や「感性」を伸ばすということです。


キーワードは「発想力」と「感性」

 我々は長年子どもたちの指導に携わらせていただいていますが、子どもたちは大人では考えつかないような発想をするものです。大胆でユニークな発想力には驚かされることがあります。子どもたちには子どもたちの世界観があり、そのなかで独特の発想力が生み出されるのでしょう。このような発想力を引き出すことこそ、子供たちの持っている本質を引き出すことにつながるのです。
 これはサッカーに限らず、音楽や芸術活動でも同じことが言えるでしょう。しかし残念なことに、成長するにつれて発想の輝きがなくなってしまう傾向があります。発想力や感性はサッカー選手としてはもちろんのこと、将来どのような道に進む上でも大切です。

 これまでイングランド、ドイツ、オランダ、アメリカ、オーストラリア、ベトナム、カンボジア、中国、韓国などを訪れ、子どもたちと実際に触れ合ってきました。海外へ行ってサッカーを見るだけでも良いですが、私はサッカーの指導論以上に、各国の歴史や文化、そして教育への興味も強く持っていました。私自身、教育に関しては素人ですが、教育とサッカーには何かしらの接点があり、教育からサッカーの指導に関して得られるヒントは多くあると感じています。
 各国で学校を訪れ、北欧ではデンマークの学校の授業に参加したり、ドイツでもシュタイナー理論(人智学に基づく教育哲学)を実践している学校を訪問したりしました。それぞれで教育のアプローチの仕方は異なっていましたが、そのなかで共通して感じられたのが、「子どもたちの発想力(クリエイティビティー)を育てる」ということです。
 これは当たり前と言えば当たり前ですが、忘れられがちなことでもあります。サッカーの指導をしていると、どうしてもトレーニングメニューなどの指導法(マニュアル)に気をとられて、「育てる」という基本的な幹の部分を忘れてしまうケースがよく見受けられます。
 もちろん、メニューも大切な要素の1つです。しかし、これはあくまでも枝葉の部分であり、幹ではありません。料理で例えるなら、レシピはあくまでもマニュアルであり、同じ調理方法でもその日の材料の状態や火の加減などで味が変わってしまうということです。

2024.04.29 by Jun Hirano / Funroots



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