vol.5 本質を引き出す環境づくり


共感力

 「子どもたちの夢をどのようなスタンスでサポートすれば良いか?」よく聞かれる質問です。
 まずは、子どもたちと「好きなこと」を共感することです。一緒にサッカーをするでも良し、キャッチボールをするでも良いでしょう。とにかく、大人も一緒に夢中になることです。そうすれば、子どもたちも自主的に楽しみ、取り組むことができます。大人の役割とは、子どもの背中をそっと押してあげることなのです。
 もちろん、子どもの考える夢には現実と大きくかけ離れているものもあるでしょう。しかし、それは子どもたち独自の世界から出てきており、一時的にしか持ち合わせないものなので、あれこれ言う必要はないのです。どんなことでも、子どもがやりたいことに対してサポートをしてあげることです。
 ジュニアサッカーの試合などを見ていると、親の声援が子どもたちの声以上に大きい光景をよく目にします。親が子どもの好きなことに共感しているのには違いないのですが、親のエゴが入っていないでしょうか。試合中に「パス出せ〜!」「走れ〜!」そして時には「何やってるんだ!」などは、子どもたちの自主性を摘みかねません。このような保護者に対して、コーチがルールをしっかりと作ることも必要です。
 保護者に対しては日々の活動時にコミュニケーションを取ることに加え、保護者説明会などでチーム全体へ子どもたちに対する接し方を伝える必要があります。まずは、プレーに対して指示を出すのではなく、サポートをしてあげる。つまり、見守ってあげることが大切なのです。
 見守るとは、子どもたち自身に責任感を持たせるという意味も含まれています。「自分で決めた道は簡単にあきらめない」「必ず全力で行う」といったことを約束するのです。このように、「子どもの首に鎖をつける」のではなく、大きな牧場のなかで伸び伸びと育てるようなイメージを持ちながら、子どもたちを正しい道へ導くことが大人の大切な役割だと思います。


ひとり一人に寄り添うこと

 そして、もう1つ大切なことがあります。コーチも一緒に夢を持つことです。これはコーチが見本となる人生を歩む(=自分の夢を大切にする)ことです。子どもたちはいつも大人の背中を見て成長します。とりわけ、サッカーコーチといえば子どもたちが尊敬する憧れの的でもあり、なおさらだと思います。
 コーチが人生を楽しみ、生き生きとしていれば子どもたちにも自然と活力が生まれ、大きな夢を持ち、心の豊かな人に育つと思います。心の豊かな人に育つということは、真のサッカーマインドを持った人へとつながるのです。
 もう一度整理しましょう。ここでのキーワードは、子どもたちの本質(本来持っているもの)をいかに引き出すかということです。マニュアルに子どもたちを合わせるのではなく、子どもたちに合わせて指導を行うのです。つまり、1人ひとりをしっかりと見つめ、正しい方向へと導くことです。
 そのためには、子どもたちと「サッカーを楽しむ時間」を共有してください。その空間と環境をサポートすることが、コーチや保護者などの子どもを取り巻く大人の大事な役割になると思います。

2024.05.05 by Jun Hirano / Funroots



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